私の事務所には、ときどき九州や中国地方、北海道や東北といった遠方より、泊りがけでおみえになる方がいます。「わざわざ旅費を使って東京にまでお越しくださらなくても、地元の弁護士にご相談なされば足りるのではないでしょうか」お電話いただいた際、御礼の気持ちを伝えるとともに、そうさし向けます。「実は、地元の弁護士さんにも相談しました。自分の保険会社から紹介された方です。一応、相談にのってはくれたのですが、この案件は受けられないって言うんです」「どうしてでしょうか」「それが、ひごろ損保側の代理人として活動しているので、損保を敵に回すことはできないって言われました」「その弁護士の方は、本件の加害者側のN損保の代理人をふだんしているわけですか」「いえ、そうではないらしいんです。でも複数の損保の代理をしている手前、将来、この件のN損保からも依頼があるかもしれず、いったん被害者側の代理人として、N損保を攻撃すると、N損保から疎まれるのでいやだとおっしやいました。地方は弁護士の方の社会も狭いんですね。ですから、そういうしがらみのない東京の弁護士さんにお願いしたいと思ったんです」この方の話は、東京、大阪、名古屋といった大都市を除く、すべての地方都市の実情にあてはまります。弁護士人口が増加したといっても、東京に比べれば、地方都市の弁護士の数は決して多いとはいえません。地方の弁護士は、お客様のニーズに合わせて、どうしてもあれもこれもと多種多様な事件を扱います。交通事故でM損保の代理人を務めていれば、損保間の情報交換などを通して、T損保、N損保というように、他の損保も依頼してきたりします。加害者側の代理人を務める弁護士は、地方都市にも沢山いるのですが、反対に、被害者側代理人を専門とする弁護士はほとんどいません。もしかすると、稀にいるのかもしれませんが、被害者にはなかなかみつけられません。
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